第4回 サウンドシステムって何ですか?
――電圧、電気抵抗と音との関係
――まずは、柳島さんのお仕事ってどんな仕事? なぜこの仕事を?

機材のクセや特徴を考え、適材適所に配置することが大事です。
CUSTOM AUDIO JAPAN 柳島(以下、柳):みんな海外のアーティストの音を聴いて、どんな機材使ってるんだろ? って思うわけじゃない? で、雑誌とかビデオとかで調べて彼らが使っているものと同じ機材を買ってみてつなげるんだけれど、なんか違う。その音が出ないわけよ。なんでだろう? ってなるよね。俺がやり始めたころは、たとえば(マイケル)ランドーはこの機材を使ってるぞ、っていうところまでは分かっても、それぞれの機材のつなげかた、まではどこにも載ってなかったの。そこで、ボブ・ブラッドショーって有名なランドー、スティーブ・ルカサーとかのアンプシステム、サウンドを作ってきた人がいるんだけど、その人から、(機材を)どんな風につなげているのかという情報を得て、そのノウハウをミュージシャンに伝えようと思ったんですよ。
――今、つなげかたとおっしゃったんですが、やはり配線が音に及ぼす影響って大きいのですか?
柳:そうですね。大きいです。全然違いますよ。最初は誰だってつなげかたなんて分からないから、とりあえず自力であっちにつなげてみたり、こっちにつなげてみたりしてやっているんですよ。
春畑(以下、春):うん。俺のも最初の頃なんて(配線)ぐちゃぐちゃだったもん。
――なるほど。手探りなわけですね。
柳:そうですね。そこをお手伝いして、ミュージシャンの希望する音に近づけるよう、システムを組んでいきます。

ヤナギーにはお世話になりっぱなしだよ。
――アンプやエフェクターなどは電気と深い関係にあると思います。もちろん電圧や電気抵抗なども音に影響するわけで。以前スタジオを作ったお話をエンジニアさんに聞いた際も「接点がなければないほど、生音に近づくので音がいいんです」とおっしゃってました。
柳:電圧、電気抵抗、共に大切ですよ。アンプやエフェクターも一種の"電気製品"なので適正な電圧で使用することが基本です。もちろん電気抵抗は少ないほうがいいんですが、「なるべく生音に近く」というのは、楽器の音を忠実に録音、再生したいというエンジニアさんのこだわりですよね。僕らは基本的にはギター+アンプで作った音色があって、それにディレイやリバーブを加えた時にその音色を損なわない様にすることを考えています。たとえば、ディレイやリバーブっていうデジタルエフェクターを通すとギターの音が痩せてしまったりするので、エフェクターを通ったリバーブだけの音とエフェクターを通さない音を混ぜたりするんですよ。
――なるほど。
柳:もともとエレキギターの生音を忠実に再生したら「ジャカジャン」とか「キュイーン」という、皆さんがCDやライヴで聴くギターの音ではなく、「ペンペン」という音なんで。
――確かにそうですね。
柳:そもそも"歪(ひず)ませる"っていうこと自体が"生音の忠実な再生"とは逆の発想だしね。
――では、電圧や電気抵抗のほかに機材を接続する順番も音と関係してくるんですか?
柳:しますよ。エフェクターの順番とか。歪ませるエフェクターとワウだったら順番を変えるだけでワウの効果が全然違うんです。
――面白いですね。つなげかたの順番を変えただけで、全然音が違ってくるとは。
柳:僕らはアンプやエフェクターが単なる"電気製品"では無く楽器だと思ってて、アンプやエフェクターはギターの音を忠実に再生するものでは無く、ギターと一緒に音色を作っていくものだと考えてます。
――アンプやエフェクターは楽器と一心同体的なイメージがあります。
柳:いくらよい機材を持っていても、機材のクセや特徴を考えて、一番いい組み合わせをしていかないと。必要なところに必要なものを配置して、プレイヤーや楽器のポテンシャルを最大限活かしていくことが大事ですね。
――なるほど。
柳:僕らはノイズや音質の劣化を無くすために電圧や電気抵抗を気にするけど、極端な例を言えば、ノイズが酷くて劣化もしていても、ミュージシャン望む音がソレなら、それが"良い音"なんですよ。
――どんな仕事にも通じる深い話ですね。望まれていること、柳島さんの場合は音を作るということですね。では、そんなミュージシャンのひとりでもある春畑さんが望む音、春畑さんのシステム構築の特徴やポイントなどがあれば是非教えてください。
柳:ファンの人ならよく知ってるかと思うけど、ハルは日本でも有数の音色をマメに変えるギタリスト。確か2小節ごとに音色を変えている曲もあったはずです。(本当にたくさんあるのですが、たとえば「僕達はどこへ」TUBE 15thアルバム『ゆずれない夏』M-12 のAメロやソロなんかは特徴的でわかりやすいです。エディー氏談)
4チャンネルのプリアンプとヘッドアンプのプリ部......音色のバリエーションがかなり多いのが特徴ですね。
――僕らは昔で言う、越後屋ですよ(柳島)
――柳島さんと春畑さんとの出会いは?
柳:確か嬬恋ライヴ(LIVE AROUND SPECIAL'94年『F・S・F Fun in the Sun with Friends』)がきっかけだったよね?
春:うん。そこからだから、もう長いねぇ。ヤナギーとの付き合いも
柳:そうだね。
春:いつも助けてもらってます。
柳:いやいや。機材は音を出さないからね。あくまでもプレイヤーが主役です。俺がハルにしてることって、ハルって新しもん好きなのね、だから新しい機材を紹介したり、要は昔で言う"越後屋"みたいなもんですよ。お客様が欲しがっているものを、これどうですか? と勧める人。
――越後屋ですか?
柳:そうそう(笑)。でも本当に、ミュージシャンの特徴を理解して、このミュージシャンにこんなのどうかな? って感じで勧めるんですよ。もちろん自分が見てよかったもだけを勧めていますけどね。
春:ヤナギーは俺のことよくわかってるから、勧めてくれるものも俺好みなんだよ。
柳:そうそう、指につけるワウが出たの知ってる?
春:知らないー。何、何?
柳:指にモーションセンンサー(指輪みたいなもの)をつけるんだけど、その指の動作で、ワウを足で踏んだり、ボリュームペダルを踏み込んで音色や音量を変化させてきたことができるんだよ。
春:スゲー。何それ。面白い。

ライヴでは音がそんなに変わっているなんて、気がつかないよね。
柳:でしょ? 右手につけてストロークすると、手首のアップダウンに合わせてエフェクトのかかりが変化するの。
春:へぇー。今度試しに行っていい?
柳:いいよ。
――本当に越後屋ですね(笑)
一同:爆笑
※ちなみにこの指にはめるワウは、SOURCE AUDIOの「HOT HAND」といいます。
http://www.sourceaudio.net/
――奇跡の沖縄ライヴ 「そんなトラブルの前例はないよ」と言われました。(柳島)
――春畑さんとの長いお付き合いの中で、何か思い出に残るようなエピソードってありますか?
柳:あー。ハルがOD100を使い始めた時、演奏中にアンプの音が一瞬無くなる......。でも直ぐ元に戻るという不安定なトラブルが発生したんだよ。でも、ステージで一瞬起こるトラブルなので僕自身も確認出来ていない状態で。スタジオとかで試しても同じトラブルが発生しなくて、原因が不明。念のためツアーファイナルの沖縄(LIVE AROUND SPECIAL'97『Bravo!』)まで同行しようってことになって。
春:あーー。あったね。
柳:そうしたら沖縄の初日にそのトラブルが発生! ライヴ終了後、夜中にL.Aのボブ・ブラッドショーに電話して状況を説明したら「う~ん、今までそんなトラブルは起きてないなぁ~」みたいな悠長なこと言ってるので、「こちとら真夏の沖縄の炎天下で、機材にビニールかぶせた状態で1万人の前でパフォーマンスしてるんだ!! こんな過酷なライヴは世界中何処にも無いんだから、ありとあらゆる可能性を考えてくれ!」って啖呵切って......。
――ただでさえ炎天下に置かれていることで負担がかかっている機材たちなのに、さらにビニールをかけることで、ビニールハウス状態になって負担がかかるわけですよね。
柳:そう。機材にとっては過酷な状態なワケよ。
――わー、熱い、熱い......。
春:だよね。普通に使ったら壊れないんだよ。きっと(笑)。
柳:で、回路図を沖縄にFAXさせて一晩中回路図とにらめっこ。もちろん飲みにも行かずにね。で、原因を絞り込んで翌日のリハで様子を見ていたら同じ現象が発生。直ぐに色々測定してみて、コイツが怪しい! って言う部品を断定できたんだけど、それは秋葉原でも直ぐには見つからないような部品で......。
――あちゃー、ですね。
柳:ところが、イエローページで探した那覇の電子部品屋に電話したらあったんです。 その部品が! しかも宜野湾。まさにコンサート会場がある街! で、車借りて、部品買って、リハの終了後にアンプをバラバラにしてその部品を変えたんです。
――(思わず拍手・・・)奇跡ですね。
柳:トラブルの原因は、熱が異常に上がってICの保護回路が働いちゃうことだったんで、ライヴ中俺はずっとその部品にスポットクーラー当てながらステージ裏にいました。終わった後はどっと疲れたけど、ハルが嬉しそうに演奏している姿が凄く嬉しかったな。音が小さくなっちゃった時、ハルはすごく悲しそうな顔をしていたからね。
――なんか感動です。柳島さんのプロ意識、職人意識がめちゃくちゃ伝わるエピソードですね。
柳:今となっては良い思い出だよね。ちなみに、後日ボブに原因をレポートしてOD100の"その部品"は1ランク上のモノに変更しました。そうそう。関係ないんだけど、TUBEの楽曲の中では「Purity-ピュアティ-」(TUBE 17thアルバム『Bravo!』M-2)が好きです。
春:(笑)。ありがとうございます。
――――ここから、柳島さんは「Purity-ピュアティ-」の魅力、自分がどれほどその楽曲を好きなのかを熱く語ってくださいました――
――では、最後に、柳島さんはは春畑さんのほかにも数々のミュージシャンの機材システムを手がけてらっしゃいますが、どんなときに仕事の悦びを感じますか?
柳:照れるけど、やはり微力でも音楽を作る手伝いをしてる人間としては、ミュージシャンが良い演奏をして、その演奏をお客さん達が一体になって本当に幸せそうな顔で楽しんでる 空気を感じる瞬間。かな。
――ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。今まではレコーディングの職人さんであるエンジニアさんにお話を聞いてきましたが、今回は瞬間の音作りの職人さんとも言える、柳島さんにお話を聞いてみました。ライヴのために改めてたくさんの人たちがよりいい音を作り上げていることが分かったかと思います。貴重な沖縄ライヴのお話からは、高桑さんもおっしゃっていた「(聴いている人が)分からなくても、やらずにいられない」と言葉と共通する、仕事に対するこだわりや意識の高さを感じることができたのではないでしょうか? 次回のライヴでは是非そんなことを思い出しながら、見てみてくださいね。春畑さんが使用している機材の詳細は、 HARUHATA SOUND SYSTEMにて紹介していますので、チェックしてくださいね。
【インタビューこぼれ話】
■華麗なステージングの裏にエディー氏あり!■
今回、エディー氏にも追加で取材をさせていただいたのですが、その際面白いお話を伺いました。
TUBE1stミニアルバム『Smile』M-3に収録されている「一気・本気・元気」はライヴでも盛り上がり必至の1曲。間奏のソロ部分で春畑氏が腕をあげると音色が変化していくというステージングでも、みなさんにはお馴染みかもしれませんね。実はコレ、裏でエディー氏がワーミーペダルで音色を変化させているのです。
以前ファンの方から「やっぱり春畑さんくらいのスーパーギタリストになると、腕を上げただけで音が変わっていくんですね!」と言われたことがあるそうですが、さすがのロックスター春畑氏も、腕を上げただけではギターの音は変わりません(笑)。こちらも今度ライヴで是非チェックしてみてくださいね!
柳島直行(CUSTOM AUDIO JAPAN)プレイヤーと楽器のポテンシャルを最大限に引き出すことに徹底したそのシステム構築には定評があり、国内外のアーティストから絶大な支持を得ているサウンドシステムメーカー CUSTOM AUDIO JAPANの専務取締役。柳島さん本人もアーティストからの信頼が厚く、彼にサウンドのことを相談する人が後を絶たない。春畑氏もそのひとり。
http://www.custom-audio.com/