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春畑道哉『WINTER LETTER』を大いに語る!

TUBEがアルバム『Remember Me』以来19年ぶりに冬にアルバムをリリースした。 やさしくミディアムテンポの楽曲が揃った今作品に「冬」「人に想いを伝える手段」というキーワードをコンセプトに書き上げられた歌詞が乗り、アルバム全体の季節感は確かに冬を連想させてくれ、とても温かくやさしい一枚に仕上がっている。今回はそんなTUBEの最新作『WINTER LETTER』の制作過程やこだわりなどを春畑氏に聞いてみた。

今までにないアルバムを作れたことは面白かった。 びっくりするようなインパクトのあるアルバムじゃないんだけれど、自分たち的には新しい(春畑)

――アルバムを聴かせていただきました。

うん。どうだった?

――こういった切り口の一枚って、TUBEというバンドとしては新しくて。

そうだね。バラードベストとか録音をしなおそうとか、そういう感じのものはあったけれどね。新録でこういうゆったりとしたのは初めてだったからね。

――気がつくとアルバムの再生が終わってるんですよね。ゆらゆら同じところを行ったり来たりしていて一枚終わってしまうという。

今までは一枚のアルバムの中でめっちゃ振れ幅が大きかったの。めちゃくちゃロックだったり、シブウチ(4分打ち)だったり、ラテンだったりフォーキーなものであったりっていうのが全部まとめて一枚の中に入ってたから。でも今回は本当に振り幅が少ないというか、ずーっと似たテンションで最後まで聴けるんだよね。そこら辺にリズム隊の今まで20年分の経験が出ているかなぁとは思うね。

――そうですね。リズムももちろんですが、今回はとにかく音がやさしいというか温かいんですよね。大人の音です。

うん。歌の帯域も、前ちゃんの張った「夏っ!」みたいな感じよりも、ぐっと低いところで歌ってもらってるし、前ちゃんは完全燃焼はできないとは思うんだけど、その余裕とかが大人っぽい雰囲気を出しているのかもね。中低域の声もすごく魅力あるなぁって最近思ってるんだ。それは今回の発見だったな。

――なるほど。それはこのアルバムを作ったからこそですね。

うん、そうだね。面白いよねぇ。あと新しいアレンジャーが入ることもすごい楽しかった。

――「冬のプレゼント」ですね。

アレンジャーにはデモを渡すとその印象がついちゃうなぁって思って、おおよそのテンポ感だけ伝えて、あえて譜面を渡しただけだったのね。もうおまかせで。純粋にその音符からどんなイメージが湧くのかなって思ったから。出来上がりを聴いて、あぁこう仕上がるんだぁ。すげぇいいなって面白かった。自分だったらこの曲はウクレレとかコンガとか入れてジャック・ジョンソン的なものになったと思うんだ。

――こうしてアルバムを作り終えてみてどうですか?

今までにないアルバムを作れたことは面白かったね。びっくりするようなインパクトのあるアルバムじゃないんだけれど、自分たち的には新しいアルバムだった。こういうのは初めてだったから、最初曲を作ったとき、「あぁ、これから十何曲、こういう曲を書いていくんだなぁ」と、逆に楽しかったな。実は「あぁ、夏なメロディだな」とか「冬なメロディだなぁ」っていうのはそれほどなくて、夏っぽく聴こえたり冬っぽく聴こえたりするのはアレンジなんだよね。で、決定的なのは歌詞だけど。

――そうですね。しかし多くのリスナーは、日本語の音楽を聴く際、メロディと歌詞とをセパレートしていないですもんね。

うん。そうだよね。メロディに季節感がある歌詞が乗ることでその曲の雰囲気がより増すよね。あと音も「クリスマスローズ」のイントロのアコギとか、ずっと昔から使ってるGibson J-45 なんだけれど、同じようなカッティングを夏の曲でも何曲もやってきてるはずなのに、別のライターさんとも話してたんだけど、今回は本当に寒々しく冬の銀世界を感じられるよう聴こえるんだよね。不思議だよ。

――今回の曲はアルバムのために全曲書き下ろしました?

ほとんどはそうだけど、昔からあったのもあるよ。「クリスマスローズ」とかは2000年くらいからあったんじゃないかな。あと「遠い日の君の姿」は2年前くらいかな。

――2000年って結構前ですね。ということは今回のアルバムのために掘り起こし作業をしたんですか? それとも発表するタイミングを待っていたのですか?

後者だね。こういうコンセプトだったから出したっていう感じかな。

ひたすら、気持ちのいい音にこだわる より俯瞰で客観的に

――今回の曲作りの過程を教えてください。今までとは違うイメージでの曲作りだったと思うんですが?

作業的には同じだけど、今までとは作り方が全然違うよね。メロディ作りに関して言えば、夏のアルバムではインパクトとかテンションとかそういうのが重視されるし、ここにサビのタイトルをもってきて、一番キャッチーなところに乗っけて……とかって考えることが多いんだけれど、今回は人にひっかかるとかそんなんじゃなくて、自然に流れていて気持ちいいメロディを重視して作ったね。

――春畑さんが考える気持ちいい音って?

今回は部屋でゆったり流れてて気持ちいいくらいのテンション感かな。爆音で聴くとか、酒飲みながらノリノリで聴くからこそ気持ちよかったりするものもあるもんね。このアルバムは部屋でまったり、車の中でゆったり静かに聴いて気持ちいい音だね。

――では今回はテクニカル的な仕掛けというよりも、気持ちいい音の追求作業だったと。

うん。自分をアピールしよう! っていうギターの弾き方は一切ない。ガンガンに弾きまくるのはソロでやれたらいいかなって。それって自己満だしね。

――そのお話と通じるのですが、アルバムを聴いて思ったことのひとつに、引き算のアルバムなんだなぁというのがあるんですが、実は「ここはもっとソロ弾いてたんじゃないかな?」とか「違うアレンジだったんじゃないかな?」とか想像できる曲が何曲かあったんです。なので、ほぼ完成したところから、さらに音を抜いていくという作業をしたのでは?

まさにそう。だいたい夏のときはギターソロまで録っちゃって歌が入って、コーラス→ミックスって流れで、今回も当然その流れだったんだけれど、歌入れしたら「このギターソロは歌に合わないから弾きなおそう」とか、そういう曲が本当に何曲もあった。「方舟」とか最初はもっと弾きたおしてたし、「星空のラブレター」とかも何パターンも録って決めたなぁ。

――なるほど。

あと、楽にただ体でいっちゃうようなフィル(イン・アウトのこと。俗にいう「オカズ」)だと、今回そういうアレンジの曲が多いから、そこに個性を出したい、かぶりたくないっていうのがあって、そこはみんなすごく口を出したよね。俺は特にそこばっか言ってたかな(笑)。あとはドラムの音。マイキング、表・裏とかのバランスはすごくこだわった。ドラムを叩いているすぐ横で聴いているような感じの音でとかね。

――いつも以上に、より俯瞰で客観的で見ることに徹したんですね。

そうだね。でもこれはある面からはすごいいいことなんだけど、ときどき思考が完全にプレイヤーオンリーになることがそれぞれあるの。それが、歌詞を吟味して曲の方向性とか決めるときに邪魔することがあって……。これは本当にそのときプレイしていない人が気付くのね。俺もドラムや歌やベースに関してはいろいろ気付くのに、ギター持っちゃうとどうしても「ここにはこのフレーズが自然に入っちゃうし」とか「その歌の合間にそのオブリ(ガード)は今必要ない」っていうのが、本当に分からなくなることが多いんだよね……。こういうことを今回はたくさんお互いに言い合った。昔ならムッとするようなことなんだけど(笑)。それも分かるようになってきたかな。

――では今、この年齢、タイミングだからこその出来上がったサウンドといいますか。一枚なのでしょうか? もっと若い頃では……、

できなかった。年齢だね(笑)。デビューして5年目くらいでこういうアルバムを作ろうと思っても、こうはならなかっただろうな。

2008年のアルバムの行方

――今回はとてもながいあいだレコーディング作業をしていたイメージがあるのですが……。

そうだね。

――海の見えるスタジオでもレコーディングされてましたよね?

うん。目の前が海でね。あそこでジェットスキーとかできるんだよ。

――誘惑が……。

そうなんだよ(笑)。夜はみんなでWiiのスポーツをやってた。みんなの似顔絵を作って。でも俺だけ何故か全然似ないんだ。

――あはは。今度ファンのみなさんからWiiの春畑さんを募集しましょうか(笑)。では、最後に次のアルバムの話を少しだけ……。

2008年はこのアルバムの反動で(笑)、もう思い切ってどバラードと、どファンキーな曲とを交互に入れようとかって話も出てて(笑)。ミディアムは一切ナシ!

――極端ですね(笑)。

そう。極端なんだよね。来年は年明けからレコーディングが始まるから、今はいろいろ考え中だよ。

※インタビューは2007年年末に行われたものです。